花の下に死す
 「来てくれたの? こんな日に」


 璋子は義清を不思議そうに見つめた。


 「任務中ではありましたが、お会いしたくてたまらなくなりまして」


 「任務中に……」


 「あなたさまにはあまり愉快ではない宴の警護を命じられておりましたゆえ、抜け出してまいりました」


 「得子の宴、ね。会いたくないから堀河に命じて、祝いの品だけは届けさせたわ」


 鳥羽院の正妃という立場上、次期天皇の決定を祝う席には出席したほうが望ましい璋子ではあったが。


 「お気に召さない集いになど、無理してお出かけになる必要などありません。あなたのその美しい顔が苦痛に歪むのを、私は見たくなどありません」


 「……」


 「私はあなたが嫌なものなど決して、その目に映させないと誓います。だから璋子さま、どうか私だけを信じてくださいませんか」


 いつものように璋子を抱きしめた。


 かつて白河院がそうしてきたように、璋子をこの世の全ての悪意から遠ざける。


 義清はそう誓ったのだった。
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