花の下に死す
***


 「!」


 夜も更けゆく頃、夜空を稲光が行き交い始めた。


 閉じた瞼にまばゆさを感じ、璋子は目覚めた。


 「……」


 隣では義清が眠っている。


 満ち足りて穏かな表情。


 しかし璋子はここに留まってはいられず、床を抜け出した。


 深い眠りに落ちていた義清は気づかぬまま。


 ……部屋の中にも時折、鋭い稲光が飛び込んでくる。


 それに誘われるように璋子は戸を開き、空を眺めた。


 と同時に。


 鼓膜を引き裂くような雷鳴が、辺りに轟いた。


 (同じだわ。あの夜と)


 璋子の奥深くに眠っていた記憶が、突如として蘇った。


 「院がみまかられた(亡くなられた)夜も、こんな雷の夜だった」


 璋子はふらふらと庭へと歩き出した。


 目に見えない何かに導かれて。
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