花の下に死す
 「……?」


 義清もまた、閉じた瞼の奥に稲光の眩しさを感じた。


 その刺激で目を覚ました。


 我に帰って隣を見ると、璋子がいなくなっている。


 先ほどまで求め合い、愛し合い……その果てにようやく眠りに落ちたはずなのに。


 「璋子さま……?」


 不安に駆られた義清は、辺りを見回した。


 庭へと続く戸が開いているのに、すぐに気がついた。


 着物を調えて、急いでそちらへと向かった。


 「璋子……!」


 義清が軒先に立つと、璋子は庭園を奥へと向かって進んでいた。


 ふらりふらりと、夢遊病のようにおぼつかない足取りで。


 「どこへ行かれるのです」


 大声で叫ぶと、周囲の者に気づかれる。


 声を押し殺しながら義清は璋子を止めようと呼び続け、後を追った。
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