花の下に死す
「院が私をお呼びになるの」
「院? 白河院がですか?」
「そう」
当然ここに、すでに亡き白河院がいるはずなどない。
「なぜ璋子さまを呼ばれるのです」
「私に、そばにまいれとおっしゃるの」
「え……」
「私の還る場所は院のおそば以外にないのだということを、忘れるなとおっしゃるの」
璋子はまことしやかに語り続ける。
「私が院のことを忘れ、他の方に身を委ねるのは許さない、とも」
「璋子さま……」
「私が他の誰かを想うようになれば、きっとその人は不幸になる、と」
「何をおっしゃられるのです」
それ以上の言葉を遮るために、義清は璋子を強く抱きしめた。
「それらは全て夢です。悪い夢。雷が引き起こした悪夢など、本気になさいますな」
「夢じゃないわ。だって院は、私が他の人に心を移すことを決して許さない」
「ならばなぜ白河院は、孫の鳥羽院に璋子さまを嫁がせたのです? 大切なあなたに幸せになってほしいと願ってのことではないのですか」
「……おなかの子の父親が、必要だったからよ」
「院? 白河院がですか?」
「そう」
当然ここに、すでに亡き白河院がいるはずなどない。
「なぜ璋子さまを呼ばれるのです」
「私に、そばにまいれとおっしゃるの」
「え……」
「私の還る場所は院のおそば以外にないのだということを、忘れるなとおっしゃるの」
璋子はまことしやかに語り続ける。
「私が院のことを忘れ、他の方に身を委ねるのは許さない、とも」
「璋子さま……」
「私が他の誰かを想うようになれば、きっとその人は不幸になる、と」
「何をおっしゃられるのです」
それ以上の言葉を遮るために、義清は璋子を強く抱きしめた。
「それらは全て夢です。悪い夢。雷が引き起こした悪夢など、本気になさいますな」
「夢じゃないわ。だって院は、私が他の人に心を移すことを決して許さない」
「ならばなぜ白河院は、孫の鳥羽院に璋子さまを嫁がせたのです? 大切なあなたに幸せになってほしいと願ってのことではないのですか」
「……おなかの子の父親が、必要だったからよ」