花の下に死す

九、狂気の花

 藤原得子が、なぜここに。


 今宵は得子が産んだ皇子体仁(なるひと)が皇太子、すなわち次期天皇位が約束された宴が、夜通し続けられているはず。


 (いわば宴の主役であるはずの得子が、なぜここに……?)


 宴を抜け出して、璋子の屋敷を覗き見に来たのか?


 偶然にしてはあまりに都合がよすぎる。


 罠だったのか?


 以前から二人の関係を察知していて、陥れようと企んでいたのか?


 (私が璋子さまの元を訪れる頃合を見計らって、現場を押さえるつもりだったのか?)


 璋子の立場を悪くするため。


 しいては……璋子の実子である崇徳帝を失脚させるため。


 崇徳帝をさっさと退位させれば、次の天皇は体仁。


 当然政務を執り行える年齢ではないので、依然として鳥羽院の院政は継続される。


 得子は帝の母、つまり国母として強大な権力を手にすることとなる。
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