花の下に死す
 「言い逃れは、しようがありませんわね。体仁の祝いの席にも顔を出さず、その間に警護の武士と関係を結んでいたなんて、国母(こくも;天皇の母)のすることかしら」


 勝ち誇った表情で、得子は璋子を非難する。


 「あり得ないことなれど、待賢門院さまでしたら仕方のないことなのかしら。幼い頃から他の男の味を知ってしまい、院を裏切ることなど何とも思ってらっしゃらないお方ゆえ」


 得子は次々と、璋子を傷つける言葉をぶつける。


 「鳥羽院をどれほど苦しめても平然として、ご自分の欲求しかお考えにならない。あなたは院のおそばにいるべきではないお方」


 得子ははっきりと言い放った。


 「なのに院は、ご自分を裏切ったあなたを何度もお許しになり……。そのような院のご厚意に甘えてあなたは、まさにやりたい放題。院にはお目を覚ましていただこうと、今宵この場に院もご招待いたしましたのよ」


 「え……」


 まさか鳥羽院までもここに?


 義清は驚愕した。


 「さあ、院。こちらへ」


 得子の合図で、物陰から鳥羽院が姿を現した。
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