花の下に死す
「おい、あの女。美人だな」
清盛が義清に告げる。
「堀河(ほりかわ)さまだ」
「知り合いか? 義清」
「いや、名前を知っているだけ。著名な女流歌人だから」
藤原璋子の最もそばに仕え、この日の歌会を取り仕切っている堀河。
歌人としても有名で、すでに数多くの歌を発表している。
年の頃は……璋子よりはかなり若いが、義清たちよりはだいぶ年上。
「美人だけど、キツそうだな」
「でもさすが、待賢門院さまの懐刀とも称される女房だ」
「義清はああいう女が好みか?」
「まさか。相手になんかされないだろ」
「確かに。宮廷の女房たちが俺らを見る目は、蔑んだまなざしばかりだ」
璋子に仕える女房たちが、歌の詠み合いに興じている間。
義清は清盛と、庭園の片隅でコソコソ話を続けていた。
この邸宅と歌会の主である、藤原璋子は。
御簾の陰に潜んだまま、決して武士たちの前には姿を見せなかった。
清盛が義清に告げる。
「堀河(ほりかわ)さまだ」
「知り合いか? 義清」
「いや、名前を知っているだけ。著名な女流歌人だから」
藤原璋子の最もそばに仕え、この日の歌会を取り仕切っている堀河。
歌人としても有名で、すでに数多くの歌を発表している。
年の頃は……璋子よりはかなり若いが、義清たちよりはだいぶ年上。
「美人だけど、キツそうだな」
「でもさすが、待賢門院さまの懐刀とも称される女房だ」
「義清はああいう女が好みか?」
「まさか。相手になんかされないだろ」
「確かに。宮廷の女房たちが俺らを見る目は、蔑んだまなざしばかりだ」
璋子に仕える女房たちが、歌の詠み合いに興じている間。
義清は清盛と、庭園の片隅でコソコソ話を続けていた。
この邸宅と歌会の主である、藤原璋子は。
御簾の陰に潜んだまま、決して武士たちの前には姿を見せなかった。