花の下に死す
 「救う……?」


 堀河の言葉を再確認すると共に、義清は先ほどすれ違いざまに目にした鳥羽院の、目に溢れていた涙を思い返していた。


 (やはり鳥羽院は、心の中では璋子さまを愛し続けて……?)


 「事を荒立てれば、疎遠な崇徳帝を退位に追い込むことはたやすいですが、院ご自身の不名誉にもなります。そして璋子さまもまた……」


 「だがなぜ璋子さまを出家させる必要がある?」


 「これだけ大事になってしまったのですから、知らないふりはできないでしょう。義清どのが発狂したことにして、北面武士を罷免。璋子さまは義清どのに付け込まれる落ち度があったということで、責任を取る形で出家」


 「何てことに……! 私が一方的に璋子さまを懸想したのがきっかけなのに」


 「でも義清どののおかげで、璋子さまははじめて自分の意志で生きることができるようになりましたわ」


 二人は璋子のほうを見つめた。


 女房たちに支えられながら、涙を流している。


 他人のために泣くことなど知らなかった璋子が……。
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