不器用な俺の恋
夕食後


「結!薬飲めよ?」

隠れなくていいように、俺がバラす

「……はいはい」

一瞬、固まったけど諦めたらしい

皆には、あらかじめ言っておいた

結が薬をだす

「それ、全部!?」

母親が驚く

しまった……両親に言ってなかった

「うん」

「あらー!!これ!結ちゃん、貧血?」

結が、頷く

「へ?」

「恭は、知らないが母さんはK高の卒業生で、看護婦だったんだぞ?」

「聞いてねぇ、初耳!!」


結の薬はざっと20くらいあった

朝と夜はこの量を飲む


結が風呂に入っている間


クッキーを食べた!!

おいしかった!!

甘党の父さんは大絶賛!!


夕食の間に結は俺の両親を

お父さん、お母さん

と呼ぶようになった!!


湯上がりの結は、可愛いパジャマ姿


本当の修学旅行だったら、見れなかったはずの姿!!

やばい!可愛い!!

乾かした髪をボンボンで結んでた



「結ちゃん!ちょっといい?」

母さんが結を別室へ

男共は聞き耳を立てる!!

俺の隣に父さんがいたことには

少しひいた


「これ!私の浴衣何だけど、2枚あるから!明日、一緒に着ましょう?」

「……浴衣着たことないから、着てみたいけど、あたし……」

「嫌なら無理言わないけど?」

「あたし…あの……」

「結?私は、あなたのお母さんなのよ?
遠慮せず言いなさい!」


女は、皆、魔法を使えるのかな


「お母さん…あたし…」

「見せて?」


母さんはよく気がつく

結の何かに気づいたんだ

服の擦れる音が少し聞こえた


「背中も…」


「このこと、佐山先生は?」

「知ってる」

「そう。よく頑張ったわね!」

「気持ち悪くないの?」

「結ちゃんは、私の娘なんだから!」

2人がクスクス笑う

「ご両親?」

「両親は亡くなった。叔父叔母から」

「それで、ひとり暮らしなのね?」

「うん。あたしね、施設で育ったの…
両親との思い出はなくて。祖父があたしを引き取ってくれて、叔父叔母に虐待されてても言えなくて。うじうじしてて
薫が、あ!佐山先生がね!助けてくれたの」

「そう! 」

「今のクラスに入ってよかった!!
生きててよかったって思ってる!!」

「結ちゃん、無理に笑わないでいい!
泣きたいときは、泣きなさい!!
我慢とか、遠慮とかしないで!!
もっと、ワガママ言っていいのよ!?」

「うん!これ以上ワガママ言うと、うざがられそうだよ?ふふふ」

「もう!かわいいわねぇ!!明日、浴衣着ようね!?」

「うん!!」


ガラガラー


突然、ドアがあいて


「あんた達!!!盗み聞きしたわね!!」

母さんの雷落ちました

結は、ケラケラ笑って

「聞かれたかぁー!!」

って、落ち込みもせず

多分…俺らに気をつかったんだろ?

知らなかった

結が虐待受けていたなんて

俺が駅でシャツに手をかけたとき

あんなに震えていたのは

体の痣を見られたくなかったからかな

結を守りたい

本当に家族になれたら……何て

まだ、彼氏でもない俺が思う

おかしなことだな……
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