セルフィシュラブ
届くはずもない声が後ろから聞こえた。反射的に振り返ってしまった私は馬鹿だ。
「っ!」
月岡先生が私に迫っていた。どうやら追いかけてきたらしい。最早ストーカーだ。恐怖を感じて冷や汗を浮かべる。無視してそのまま走り出せば「あっ、」と焦ったような声が後ろから。
「待てって!」
ひぃーっ!追いかけてくる!やだ!キモい!ストーカー!変態!
半ば泣きそうになりながら床を蹴って走る。
…最悪っ最悪……最悪だ!!どうしてキスマーク付けてる先生と追いかけっこなんてしないといけないんだ。
私はただ苦手な先生が生徒に告られていたという現実から逃げ出そうとしていただけなのに。
「っ、逃げ切れると思うなよ」
「うっあっ…!」
いつの間に追い付いていたのか、ちょんと微かに腕を触られてゾワワワワワっとあり得ないほどの鳥肌が体中にたった。
パニックに陥ったら自分でもどうすることもできない。勝手に体が動いた。触られた腕を振り回してしまうと持っていた鞄も一緒に振り回すことになって。
「っ!」
バコンっと見事に月岡先生に私の鞄が直撃。