セルフィシュラブ





足を止めている場所は3階の廊下。あと少し進めば女子トイレがある。昇降口までは程遠い。


もし逃げるとすればトイレの中だ。さすがにふしだらな月岡先生でも女子トイレまでは入って来ないだろう。


ひっそりと脱走計画を立てていつでも逃げられる準備をしておく。



「君さ、見たよね?」

「……」



いつまでも睨み付けていれば月岡先生は小首を傾げて口を開いた。


薄茶色の髪が少しだけ揺れる。



「覗きってやつ?まあいいけど誰にも言わないでくれない?面倒なんだよ。後で騒ぎ立てられるの」

「……」

「お願い言わないで」

「……」

「ねえ、聞いてる?」

「……い、」

「ん?」

「…キ、モい…」

「え?」

「キモい!離して変態!クソ教師!!」

「っ」



早口で遮ることなく罵った。その勢いで唾まで飛んだかもしれないが、今はそんなことどうだっていい。


驚いて力を緩めた月岡先生はパチリと二重の目を瞬きして私を見下ろす。


力が緩んだその隙に腕を引っこ抜いて、一定の距離をつくった。



「あんたみたいなクソ教師学校辞めればいい!」

「……」

「…さっきのこと言わないから…。二度と私に近付かないでください」

「……」

「あと、…学校辞めてください」



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