セルフィシュラブ
知られた名前
朝から胃がムカムカするのは昨日の出来事のせいだ。机に踏ん反り返り肺の底からはあーと重たい溜め息を吐き出す。
月岡(もう呼び捨てでもいいあんな男)と言葉を交わしてしまったという事実がどうしようもなく気持ちを落ち込ませる。辞めてくれないかな、本当に。
残念なことに1限目は日本史。チッ。月岡じゃねぇかよ。くそ。朝からアイツの顔見ないといけないのかよ。
サボろうかななんて不良じみたことを思うようになった。それもこれも月岡のせいだ。月岡がこの学校にいる限り不良でい続けなければならないことになる。
「あ、つっきーおはよー」
帰宅部のエース山根君がそう挨拶をした。なんだよ、月岡辞めてなかったのか…残念。
「あーおはよー」
怠そうな声だな朝から。教師ならもっとシャキッとしろ。やる気ないなら帰れ。今すぐ出てけ。
「大姶良ー見て見て。今日も月岡先生かっけーよ」
「…、…嫌がらせですか」
私の前の席である間宮はデレた顔を曝け出して月岡を盗み見する。チッと舌打ちでやめろと示せば「うけるー」とケラケラ笑われた。