セルフィシュラブ
授業が終わるや否や月岡に心を奪われている女子達が一斉に私の席までやって来る。教科書とノートを仕舞っていた私は突然のことに唖然としてしまった。
「瑠依ちゃんなんであんなに先生と親しいの?」
「先生のこと嫌ってなかったっけ?」
「実は狙ってたの?どうやって近付いたの?」
「もしかして付き合ってるの?」
「…え、」
そんなわけないでしょう。どうしたらそんな解釈になるんだ。ただ名前を数回呼ばれただけ。今までフルネームですら呼ばれなかったから余計みんなが騒ぐのかもしれない。
「やめて。気持ち悪いこと言わないで」
「じゃあなんでそんなに親しくなったの?!」
「いやいや私は親しくなんかしてないよ?」
向こうが一方的に距離を詰めてきただけで。むしろこっちは迷惑してて。教師辞めればいいとまで思ってるんだよ私は。
「…そっか。たまたまか。たまたま呼ばれただけだね」
「そうだよきっと。月岡先生彼女つくる気ないって言ってたもんね」
「そーそー」
あー…昨日も告白されて断ってたしな。気持ち悪いくらい優しい声出してた。思い出しただけで寒気がする…。
彼女たちの話を聞きながら体を震わせていると「大姶良ー、」と間宮が気の抜けた声で私を呼んだ。