セルフィシュラブ
はっきり言って好みじゃないのだ。どれだけ月岡先生がイケメンだとしても私は好みじゃないのだ。
‘イケメン’が苦手なのだ。顔が整いすぎてる人が苦手。上手く会話できない。どこを見て話せばいいのか分からない。
同じ人間のはずなのに違う生物に見える。同じ地球に生存していると思えない。だから分からない。どう対応していいか分からない。
だから私は月岡先生の目に留まらないように必死なのだ。
授業中だってあたらないようにいつも俯いて話を聞いている。目が合わないように先生が黒板に書いている間にノートに黒板の字を写す。
とにかくオーラを消して目立たないように。
週に3時間ある日本史の授業のときは、毎回そんなことをしているせいで授業が終わった後はクタクタだ。
疲れる。精神的に疲れる。辛いけれどそのくらいイケメンが苦手だってことなのだ。
そんなあたしを見兼ねて友人は「あんた高さんと結婚しなさいよ」と真面目な顔をして言ってくる。
高さんとは、英語の先生の高ノ山先生のこと。おそらく50歳前後で既婚者。だかしかしその辺にいるおじさんのように見えてイケメンでもない。
だから私は高さんとは素の自分のまま話せる。なんて楽なんだ。高さんは私の結婚相手にもってこいの人なのだ。
高さんは既婚者だからしかもけっこう奥さんとラブラブらしいから、私が入る隙間はない。
残念、だ。