セルフィシュラブ
そんなある意味エースな山根君と廊下を並んで歩く。普段彼とはあまり話さない。関わりがない。
だからこういうときどう接すればいいのかが分からない。
別に山根君はめちゃくちゃイケメンってわけじゃない。普通だ。ちょっとエースなだけだ。だから苦手意識はない。
「大姶良ってさ、」
だけど彼から話しかけてきたことには少し驚いた。
「何?」
「イケメンが苦手らしいじゃん?」
「な、なんでそれを…」
「クラスの女子が言ってるのが聞こえたんだよ。変わってんなって思って」
「(…チっ。みんな声が大きいんだよ。クソ。)そうかな。私にとってはこれが普通だよ」
「月岡のこと嫌いなんだろ?」
「…嫌いってほどじゃないけど」
苦手なだけ。
山根君は私の言葉に「へぇー」とどうでもよさそうに反応をする。本当にどうでもいいことなのかもしれない。
「山根君は可愛い子が好きなんでしょ?」
「まあ、男としては美人でボッキュッボンがいいかなぁー」
「……」
「おいおい引くなよ!」
じとーっと白けた目を送ってしまったのは無意識に近い。山根君は焦った様子で私に弁解をしようとする。
も。既に職員室前。ここで会話は終了だ。