セルフィシュラブ
山根君が先に職員室の中へ入る。私もそれに続いて無言で足を踏み入れると、フワリ、とコーヒーの香りが鼻腔を擽る。
クソ。先生たちばかりコーヒー飲みやがって。
悪態をつきつつも担任のデスクの前に立つ。山根君は「運ぶもんってこれですか?」と首を傾げた。
「おう。それそれ。重いから二人で持っていつてくれ」
「先生、こんなぶっとい本配られてもみんな捨てると思います」
「なんちゅーことを言うんだお前は。進路の大事な本じゃないか。捨てるなんてこと許さんぞ」
「(えー…絶対1回も読まないよー…)」
顔を顰める山根君。
私は3センチくらいありそうなその本をとりあえず何冊か持ってみた。
と。思わず眉間にシワが。…お、おも、い。こいつ意外と重いではないか。
「じゃー、頼んだぞ」
無責任な担任は立ち上がると「高さーん」と高ノ山さんのところへ歩いていってしまった。
残された私と山根君はなんとか全部の本を持ち上げる。
しかしどう見たって山根君の方がたくさんの本を持っている。
「や、山根君」
思わず声をかけた。