セルフィシュラブ
「ん?」と目だけで返事をした彼。重いものを持ってるっていうのにその余裕な表情。信じられない。
「私もうちょっと持つよ。重いでしょ?」
「へーきへーき。男なめんなって」
「…ほんとに大丈夫…?」
「んだよー。大姶良は俺をか弱い女子だと思ってんのかよー」
断じてそんなことは1ミリも思わなかったけど。
ヘラヘラと笑う山根君は本当に平気そうな様子だから、私は気にすることなくドアに向かって歩き出した。
と。ここで問題発生。
ドアの前で立ち止まった私に後ろにいる山根君が「どうした?」と不思議そうな声を出す。
「…手が塞がってドアが…、」
「あー、しょうがねぇここは俺がぶち壊して、」
冗談なのか本気なのか。山根君が大きく足を振りかぶってドアを蹴飛ばそうとした。
刹那。
「うわっ…、」
目の前のドアが内側に開いた。