叶う。 Chapter2
プロローグ
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私は窓から見える木々を眺めながら、膝の上にもうすっかり見慣れた日記帳を広げるとシャーペンの先でトントンとリズムをとった。
それは私が考え事をする時の癖で、アンナであった頃から変わる事のない唯一の癖だった。
書きたい事は沢山あるけれど、何から書いたら良いのか。
私はゆっくりと頭の中でそれを整理した。
私は一つずつ、丁寧にそれを文字にして日記帳に書き出した。
スラスラとペンを走らせて、時折読み返しては、自分の記憶をしっかりとその場所に書き写した。
握ったシャーペンが小刻みに震えた。
それは私の瞳が涙で滲んで歪んでしまったからだ。
両目からポタポタと流れ落ちる涙は、日記帳に不規則な水玉を描いていた。
だけれど私は、もう泣かない。
私は指先で涙を拭うと、心が静まるのを待った。
その瞬間、階下から微かに私を呼ぶ声が聞こえて来た。
私はパタンと日記帳を閉じると、鍵をかけて机にそれをしまった。
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