叶う。 Chapter2
だけれど、一人だけ私の存在を認めていない人が居る。
それはやっぱりシオンで、相変わらず毎日のようにこっそり私を監視しているのを私は知っている。
シオンとの関係は相変わらずで、気が向いた時には私を抱きにやってくる。
私も特に拒否する理由もないので、気の向くままにそんな関係を続けていた。
だけれど、最近は私のピアノの発表会が近いから、あまり顔を合わせることもなかった。
私は指先の怪我のおかげで、結局1週間ピアノを休んだ。
久々にピアノに触れると最初は指が鈍ってて、全くと言っていいほどその旋律はガタガタだった。
先生は何とか発表会に間に合わせようと、必死にレッスン日を増やして私を指導した。
だから私も必死で練習を重ねていた。
今年こそ、なんとか優勝したかった。
あの子が出来なかったことを、何か一つでもやってやるという気力だけで、私は寝る時間以外はほとんどピアノと共に過ごした。
一週間もそんな日々が続くと、私は段々と感覚を取り戻し始めた。
先生はそんな私に涙して喜んでくれていたけれど、それでも私は気を抜く事は一切しなかった。
あの子の頭の中で考えていた事を必死に思い出し、それをピアノで演奏するのは物凄く神経を使う作業だったけれど、私は挫けなかった。