叶う。 Chapter2
演奏を無事に終えると、シオンはまた丁寧にヴァイオリンをケースにしまった。
私は弾きなれない曲を弾いたおかげか、指がぐっと重たくなった気がした。
少しだけ休憩しようか迷っていると、ヴァイオリンを片付けたシオンが相変わらず冷めた瞳で私をじっと見つめた。
その視線にイライラしたので、私はまた軽く舌打ちをしてシオンを睨んだ。
「・・・何?」
何か言いたげなシオンの雰囲気に、私はイライラを隠さずそう言った。
「・・・お前は何と戦ってるんだ?」
大きなグランドピアノに寄りかかりながら、シオンはじっと私を見つめたままそう言った。
「・・・・どういう意味?」
「そのままの意味だ。」
シオンはそう言って、軽く溜息を吐いた。
「お前を見てると、何かに対して腹を立ててる様にしか見えない。」
「どういう意味?」
私はそう言って、眉間に皺を寄せてシオンを睨んだ。
シオンはそんな私の態度は全く気にもしていないように、呆れたようにこう言った。
「自分でよく考えるんだな。」
シオンはそう言うと、私が質問する隙を与えずに防音室を出て行った。
私は何だか取り残された気分で、余計にイライラが増した。
気を取り直してピアノに向かおうと思ったけれど、全く集中出来なかった。
シオンの言葉の意味を考えて、私は更に集中出来なくなった。