叶う。 Chapter2
考えれば考えるほど意味が分からない。
私が両手で頭を抱えてピアノに寄りかかると、鍵盤が肘にぶつかって大きな音を立てた。
あまりの大きな音に、思わず両手で耳を塞いだ。
途端に頭痛が酷くなって、私は両手でこめかみを強く押した。
最近、よく頭痛がする。
さっき行った病院で、永島先生にそのことを訴えたけれど、おそらくストレスだろうと言われた。
そんな事くらい自分でも分かるけれど、医者は理由が分からないと何でもストレスにしたがる。
だけれどピアノのせいか、最近は神経を使ってばかりいるのだからそれは仕方ない事なのかもしれない。
発表会は来週末まで迫って来ているのだから。
私はやっぱり少し休憩しようと、ピアノの鍵盤蓋を閉じてそのまま防音室を出た。
向かうのは自分の部屋。
部屋に入った私は、そのままベッドに座って充電しっぱなしの携帯を手に取った。
もうすっかり見慣れたその番号を開くと、すぐに電話を掛けた。
しばらく呼び出し音が続いていたけれど、4コール目くらいにその人と電話が繋がった。
“もしもーし”
何だかその声に、すごく安心感を抱いた。
どんな時でも、その人の声音は変わらない。
いつも私を気遣ってくれる、その優しい声音に最近の私はすっかり虜になっていた。