叶う。 Chapter2
「もしもし?和也?」
"どうしたー?ピアノに飽きたの?"
和也はそう言って、クスクスと優しい笑い声を上げた。
「……飽きたんじゃなくて、和也の声が聞きたかっただけだよ。」
"お?そりゃ嬉しいね。俺もかなうの声が聞きたいと思ってたところだ。"
「今日は何してるの?」
"いつものメンバーで溜まり場に居るよ。かなうも来るか?"
私はしばらく迷ったけれど、やっぱりピアノの練習をするべきだと判断した。
少しの油断でグランプリがとれなかったら、多分私は一生後悔するだろう。
「とっても行きたいけど、今は我慢しないと。」
私が心底残念そうにそう伝えると、和也も心底残念そうにこう言った。
"会えないのは寂しいけどな。俺もかなうに頑張って欲しいから、我慢するよ。まぁ、後でちょっと会えるしな。"
和也はそう言って、少し溜め息混じりに笑った。
その後は少しだけいつもみたいに雑談して、私達は電話を切った。
名残惜しい気分で電話を切るのはとっても寂しかったけれど、そうも言ってられない。
それに和也とは、今夜少しだけ一緒に過ごす約束になっている。
今日は土曜日だから、邪魔な兄達もいないしママもお仕事だ。
だから、一緒に夕飯を食べる約束をしてあった。
勿論、家ではなくて外食だけれど、一緒に過ごせるだけで私は満足だった。