叶う。 Chapter2
考えてみたら、朝からろくにご飯を食べていない。
部屋に向かう廊下を歩きながら、そんな事を考えた。
最近は何より悪夢ばかり見ているので、正直食欲が全くなかった。
私の体重は僅か2週間で、3㎏も落ちてしまったので元々貧相な身体が更に醜くなった。
そんな私の姿は、ママも含め皆気付いているけれど、ピアノのせいだと思っている様子だった。
顔を合わせる度に、何か食えって食べ物を押し付けてくるレオンはちょっとウザいけれど、私が好きなケーキやお菓子を良く買ってきてくれるので、たまに嬉しかったりもする。
私は部屋に入ると、鏡台に座ってその鏡を覗き込んだ。
そして鏡に映る自分を見てぞっとした。
病院に行く前に軽くメイクも髪型も整えていたのに、何故かその面影は今や完全に消えてなくなっていた。
鏡に映っているのは、まるで海外のホラー映画に出てきそうな子供みたいな容姿だった。
私はそれを見て盛大に舌打ちをした。
寝不足で隈だらけの目に、痩せこけた頬、ぼさぼさの髪に至るまで、何もかもが気にさわる。
私はイライラしながらも、いつもより念入りにメイクを施した。
メイクをしていくと段々と良くなる顔色に、何故だかとてもほっとする。
仕上げに髪を緩く巻いてハーフアップにした。
もう一度鏡を覗き込み、おかしなところがないかチェックした。
大丈夫、そこに映るのはいつもの可愛らしい"かなう"だった。