叶う。 Chapter2
「もしもし?」
"もしもし?どうかしたの?"
寒い中待たされて居るにも関わらず、和也はいつも何より先に相手を気遣う言葉を掛けてくれる。
「ごめん、ピアノに夢中なっちゃってて、支度がまだなの。上がって待っててくれる?」
"え?マジで言ってる?俺手ぶらだし。"
「大丈夫、誰も居ないから。」
"誰も居ないのにお邪魔して良いの?"
「うん、寒いから早く来て?守衛さんに、私に会いに来たって言って。」
"なんか緊張する。了解、ちょっと言ってくる。"
和也が電話を切ると、直ぐに家のインターフォンが鳴った。
守衛さんは私に確認を取ると、和也を中に入れた様子だった。
私はインターフォン横に備え付けられている機械にカードキーを通すと暗証番号を打ち込み、和也の為にエレベーターを1階に降ろした。
来客があるとこう操作しておけば、後はエレベーターが勝手に操作された階に向かってくれる。
万全過ぎるセキュリティは面倒だけれど、シオンとレオンの事を思い出し、このセキュリティはきっとあの二人の為にあるんじゃないかとふと思った。
私は直ぐに玄関に向かった。
扉を開けると、エレベーターから降りた和也が唖然と庭を眺めていた。
玄関の光に気づいたのか、和也はすぐに私の姿を見付けて、真っ直ぐ此方に向かって歩いてきた。
「家すげぇな!」
和也は心底驚いたようにそう言ったけれど、薄着で寒かった私はさっさと和也に家の中に入るようにお願いした。