叶う。 Chapter2
「お兄さんと仲良いの?」
隣に座った私に、和也はそう聞いてきた。
出来たら避けたい話題だけれど、今は冷静に対処すべきだと思った。
「どうだろ?普通かなぁ?」
そんな風に少しだけおどけて言ってみたけれど、何故か和也と視線を合わせるのが難しい。
「それより、ご飯行かない?」
私は話をすり替えて、当初の目的を和也に思い出させようとした。
だけれど、和也はなぜかあまり乗り気じゃないようだ。
いつもの優しい表情は、何となく考え事をしているような雰囲気だった。
私はこれ以上刺激を与えないように、和也が何かを質問してくるのを待った。
自分から話を振るより、その方が良いと判断したからだった。
暫くの沈黙の後、和也は急に隣に座った私を片手で抱き寄せた。
私は勢い余って、和也の胸にペタッと貼り付いてしまったけれど、和也はそんな私を優しく両手で包み込むように抱き締めた。
「……俺やばい。かなうが好きすぎて、お兄さんにまで嫉妬しそう。」
そう言って、自分の胸に小さく収まった私の髪に唇を寄せた。
その仕草に何だか無性に愛しさが込み上げて、私は和也を見上げるように視線を合わせた。
綺麗な漆黒の瞳に映る自分を見つけた瞬間、私はゆっくりと目を閉じた。
触れるだけの優しいキスだけなのに、なぜか胸がドキドキとうるさい。
キスなんて何度もしている筈なのに、何故か胸の高鳴りは鎮まる事はなかった。