叶う。 Chapter2
「その日、何かあったの?」
答えない私に、和也は珍しく詰め寄った。
私はベッドから起き上がると、ベッドに座る和也の膝元に頭を乗せた。
何だか和也がいつもと違って見える気がするのは、私の心が戸惑っているからなんだろう。
和也は私を膝枕したまま、そっと私の髪を撫でる。
私は上を向いて、和也としっかりと目を合わせてこう言った。
「あの日、あの場所で兄達に会ったの。樹さんは兄達の知り合いだったみたいで、凛が別れたがって居る事を兄に話したの。それから私は兄に任せて直ぐ帰ってきたから、どうなったのかは知らない。」
私は言葉をしっかりと選んでそう言った。
事実、私は何も知らない。
知ってはいけない。
「そうなんだ。」
和也は私の髪を撫でながら、腑に落ちない様子でそう言った。
茶色い髪の隙間から見える漆黒の瞳が、何故か全てを見透かしているようで何だかとても怖かった。
「晃から聞いたんだ、その日かなうが樹先輩と一緒に居たって。」
私はお喋りな晃にちょっとうんざりした。
だけれどあの日は目立つ格好をわざとしていたのだから、仕方ないと思った。
「うん、でも樹さんとはその日会ったきり会ってないし、居なくなったのも今日初めて聞いたんだよ?」
もう沢山だった、これ以上何を聞かれても私は答える気もなければ答える事も出来ないだろう。