叶う。 Chapter2
だけれどもう起きてしまった事はどうしようもない。
和也はきっと私の事を色々と疑っている。
多分それは今まで言わなかっただけで、本当はずっと聞きたかったのかも知れない。
バスタオルと小さな掃除機を取り出しながら、私はそんなことを考えた。
本当の事を告げるべきなのか、それともこのまま濁して別れを選ぶべきなのか、私にはその決断が出来なかった。
以前の自分なら、間違いなく別れる事を選択したはずなのに、私は何故か和也を失いたくないと思ってしまった。
だけれど兄達と和也には接点を持たせるわけにはいかない。
だから、シオンと私の関係は決してバレてはいけないのだと、私は固く心に誓った。
和也は私が思っていたよりもずっと賢くて勘が鋭い。
だから、きっと和也は私と兄との関係を疑っているのだとさっきの会話から何となくそう感じた。
全てを丸く収める為には、多少の真実を話す事は最低限必要なのだ。
私はそう思って、覚悟を決めて部屋に戻った。
静かに部屋の扉を開けると、和也は割れたカップを綺麗に重ねてまとめておいてくれたみたいだった。
相変わらず無言で私から掃除機を受け取ると、細かいガラスを丁寧に掃除してくれた。
私は綺麗になった場所からこぼれた紅茶をバスタオルで拭き取った。