叶う。 Chapter2
ピンクのソファに紅茶が染み込んで、強く擦ったら毛羽立ってしまった。
ママに頼んで買い換えてもらおうと考えながら、私はもう片付け終わって掃除機のコンセントを抜いていた和也に向き直った。
「・・・話があるの。」
私がそう言うと、和也はゆっくりと振り返って私をじっと見つめた。
私は和也に近づくと、その目の前に立った。
ゆっくり上を見上げると、和也はじっと私を見下ろしていた。
その視線に、誤魔化しはもう効かないと改めて感じて、私はゆっくりと口を開いた。
「軽蔑・・・されるかもしれないけど・・・。私はこの家の子じゃないの。」
私が静かにそう言うと、和也の視線が少しだけ揺れた。
「私が、6歳の時に・・・母が自殺したの。」
和也は明らかに動揺している様子だったけれど、私はそのまま言葉を続けた。
「それから私は色々あってこの家に引き取られた。まだ小さかったからあまり記憶にないの。だけどね、ママも兄達も本当に私を大切に育ててくれた。」
私はそう言って、小さく息を吐き出した。
和也は明らかに動揺はしていたけれど、未だ真っ直ぐに私の瞳を見つめ続けていた。
「前に、私が転校してきたって話したよね?」
私がそう言うと、和也は静かに頷いた。
「こんな良い家に住んでて、兄達は進学校なのになんで私だけが普通の公立に通っているのか、分かる?」
出来れば察して欲しかったけれど、和也は小さく首を振った。