叶う。 Chapter2
幼い頃に、私はそれを嫌と言うほど味わったはずなのに。
信頼していた大人達に、簡単に裏切られて性の玩具として扱われ続けた私には、人を愛するだとか、信頼するだとか、そんな事はする必要がないってきちんと分かっている。
だけれど心とは不思議な物で、和也だったらほんの少しだけ信じてしまいたいと思ってしまうのは、私が弱っているからなのだろうか。
今は色々と大変な時期だから、私は酷く弱っているのかもしれない。
実際に身体にも影響が出ているし、さっきの頭痛しかり、眠れない事しかり、多分全部がストレスなんだろうと思った。
だけれど例え身体がおかしくなろうが、私にはやるべき事が沢山ある。
まだ、まだ、沢山ある。
遠い未来よりも、今は近い将来をきちんと見つめ直さないと、私は目的を達成する前に潰れてしまう。
それだけは、何があっても避けなければいけない。
"お前は何と戦ってるんだ?"
静寂のなかでふとシオンの声を思い出した。。
自分では冷静でいたつもりだったけれど、賢いシオンにそう言われたって事は、やっぱり他人には分からないかもしれないけれど、私の心は荒んでいるのかもしれない。
原因はやっぱり、余裕がないからだろう。
だけれど、後1週間。
後1週間さえ、無事に乗りきれば良い。
私はそう思いながら、静寂の中で一人きり、ピアノの鍵盤を弾いた。