叶う。 Chapter2
「いや、しょうがないでしょ?あれだけピアノ頑張ってたし、かなうが大変なの、見てて分かっているし。」
「でも、なんかごめん……」
「いやいや、全然。俺がかなうの立場だったらきっと同じだと思うから、気にしないで。」
「う、うん。」
「ただ、明日が終わったら、さ……」
「うん?」
「クリスマスデート1ヶ月記念しようぜ。」
和也はそう言って、楽しそうに笑った。
すっかり忘れていたけれど、世間はクリスマス真っ只中だった。
良く見れば、駅ビルの中もクリスマスの飾り付けで賑わっている。
そんな事すら頭になかった私は、何だか本当に余裕がない自分に心底呆れてしまいそうだった。
「うん、楽しみにしとく。」
優しく私を見つめる瞳としっかりと視線を合わせて、私は心の底からにっこりとした。
「どっか行きたいところある?」
そんな私に和也がそう聞いてくれたけれど、私は直ぐに考えつかなかった。
それもそのはず、幼い頃からクリスマスどこかにお出掛けなんてした事もなかったし、どういう場所があるのかすら私には分からない。
私が凄く真剣に考え出したので、和也は笑ってこう言った。
「まぁ、ゆっくり考えといて。かなうの行きたいところ行こう。」
そう言ってテーブルに腕を組んでじっと私を見つめてた。