叶う。 Chapter2
「ただいま。」
レオンが開けてくれた玄関に先に入ると、私は少し大きめな声でそう言ってから、靴を脱いで家に上がった。
レオンもすぐその後に続いて玄関に入って来たけれど、兄達は日本にずっと住んでいるのに、いつも行動がレディーファーストなのだ。
元々そういう性格なのかもしれないけれど、レオンは特に女性を立てる。
覗き見されたのは気分が悪いけれど、そういう風に扱われると、何だか憎めない。
「あら、揃ってお帰りなの?珍しい。」
どうやら私の声に気付いたママが、リビングから此方に向かって歩きながらそう言った。
「下で会っただけだよ。」
私がそう言うと、レオンはすかさずママにこう言った。
「そうそう、おかげで見せつけられた気分だよ。」
レオンはそう言って、また私を見てニヤリと笑った。
ママはレオンの言葉に大体見当をつけたらしく、笑いながら私にこう言った。
「ピアノどうだった?」
「うん、大丈夫そうだよ!」
「そう、良かったわ。ここまでよく頑張って来たわね。」
ママも先生と同じで、優しくそう言って私を抱きしめてくれた。
「今日はゆっくり休んで、少しで良いからご飯も食べて頂戴。衣装だけ後で合わせておきましょうね。」
ママは私から身体を離すとそう言って、私の肩を抱いてリビングに向かった。
食欲はあまりないけれど、きっとママはご飯を作って待ってくれていたのだろう。