叶う。 Chapter2
リビングには、良い匂いが漂っていた。
私は今日の晩御飯はシチューであることを密かに感じながら、荷物をソファに置いて、ママと一緒にキッチンに入った。
ママはご機嫌でぐつぐつ煮立つ鍋をかき混ぜていた。
私はその横でお皿を用意したり、シンクに置かれたサラダの水切りなんかをしてママの手伝いをする。
もうすっかり慣れた手つきに、これだけ手際良く料理が出来ればきっと良い奥さんになれるだろうとふと思う。
そんなくだらない事を考えていると、リビングの扉が開いて着替えを済ませたレオンがやってきた。
「腹減った・・・。」
レオンはそう言ってダイニングテーブルに着くと、だらしなく座ってポケットから携帯を取り出す。
いつものママならそんなレオンに怒ったりもするんだけれど、今日のママはご機嫌だったのでレオンのだらしなさが気にならないようだった。
「そういえばシオンはまだなの?」
ママは振り返ってレオンにそう尋ねた。
「さぁ?気付いたら居なかった。」
「・・・普通居なくなったら気付くでしょ?」
ママはそう言って、非難がましい視線をレオンに送ったけれど、レオンは相変わらずダラダラしながら携帯をいじっている。
「明日早いんだから、帰ってくるように言って。」
ママはそう言うと、レオンの携帯を指差した。
多分、電話をしろって事だろうと私は勝手にそう思った。