叶う。 Chapter2




発表会の会場はとても大きい。
その場所はプロのピアニスト達がコンサートを開く場所でもあるくらいなので、広くて音響設備も完璧だ。

だから毎年観客も多いし、それなりのレベルに達していないとその会場の舞台に立つことも出来ない。

発表会というよりコンテストのようなものなので、出場者の家族は本人を含めて5人までしか会場に入る事すら出来ない。

本来なら和也や凛にも来て貰いたかったけれど、毎年ママとレオンとシオンと先生で行くので、誘う事が出来なかった。

シオンが来ないでくれるなら、私は喜んで和也を誘っただろうけれど、家族である手前そんな事は言い出せるわけもない。

毎日私を観察するシオンの冷めた蒼い瞳を思い出して、私は小さく溜息を吐いた。

それにさっきレオンに言われた事が、頭にすっと浮かんでくる。

シオンは私じゃなくてあの子が好きなんだから、私が和也と何をしようが多分気にしないんだろうと思っていたけれど、レオンのあのふざけ半分の言い草だと、あの現場をシオンが見ていたら、腹を立てるのかもしれない。

和也に何かされても困るし、これからは少しだけ行動に注意しなくてはと、私はサラダを盛り付けながらそんな事を考えていた。


「アイツ電話出ないよ。」


私が頭の中で色々と考えを巡らせていると、レオンがうざったそうにそう言った。

どうやら何回掛けても電話に出ないらしい。




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