叶う。 Chapter2
和也の背後で楽しそうに笑う、凛じゃない女性の声がとても耳障りだった。
多分、普通なら聞こえないくらいの音量なんだろうけれど、耳の良い私にはその声が聞こえてしまう。
″……かなう?どうかした?″
無言を貫き通していた私に、和也が優しくそう問い掛ける。
「別にどうもしないよ。」
私は自分でも分かるくらい、不機嫌全開でそう言った。
くだらない。
私は一体何を考えているんだろう。
″ん?何かあるなら言ってよ。なんか機嫌悪くない?″
和也は性格上、いつも思った事をきちんと言葉にして私に伝える。
それはある意味純真な心の持ち主だからそうなんだと思っていたけれど、何故か今の私はその純真さにイライラが増した。
「別になんでもない。明日早いから寝るね。」
私は不貞腐れて冷たくそう言った。
″なんで?俺なんかした?″
和也がそう言った声が聞こえてきたけれど、私は通話を切って携帯をベッドに投げつけた。
さっきまでは、とても楽しい気分だったのに。
和也の背後から聞こえた雑音が、耳に残ってすごく不愉快だった。
投げ捨てた携帯は、さっきからずっと鳴りっぱなしだったけれど、私は完全にそれを無視した。
10分くらい放置していると、携帯はとうとうおとなしくなった。