叶う。 Chapter2
和也は直ぐに電話に出た。
「もしもし?」
″もしもし、ごめんな。どうしたの?なんかあったのか?″
「ううん。こっちこそごめん。なんか気分が落ち着かなくて、イライラしてたの。嫌な気分にさせちゃってごめん。」
″いや、落ち着かなくて当然だよ。俺こそかなうの気持ちちゃんと考えてなくて、連絡遅くなっちゃったし、ごめんな。″
今度は和也の背後から、音は聞こえてこなかった。
家に帰ったのか、それとも静かな所に移動したのか、私には分からないけれど、もうどっちでも良かった。
「本当にごめんね。」
私は、しおらしく素直に謝った。
その方が、和也も深く色々聞いたりしないだろうと思ったからだ。
案の定和也は、その後当たり障りのないいつもの優しい口調で話始めた。
″いや、本当に俺もごめんな、明日なのに気分悪くさせて。でも電話くれて良かったよ。返信なかったら行こうかと思ってた。″
「え?……今から?」
″うん。心配だったし。″
和也はそう言って微かに笑う。
聞こえてくる吐息が耳にとても心地良かった。
「ありがとう、そんな風に思っててくれたのにごめん。そろそろ寝なくちゃ。」
″そうだよな。明日何かあったらいつでも連絡してな。無理しない程度に頑張ってね。″
「うん。ありがとう。……お休み。」
″うん、ゆっくり休んで。おやすみ。″
優しく私を安心させるようにそう言った和也の声をきちんと聞いてから、私は電話を切った。
もう何も聞こえてこない携帯に、なぜかとても悲しい気分になった。