叶う。 Chapter2
薄手のドレスはこの季節には寒すぎて、私がくしゃみをしたので、ママはクローゼットからカーディガンとファーのコートを取り出して私に着せた。
それから今度はリビングに移動して、メイクと髪をセットする。
衣装を汚さない様に注意しながら、ママは私の髪を綺麗に巻いていく。
私はその間、自分の顔にしっかりと手入れをしながら下地とファンデーションで丁寧に基礎を作った。
慌ただしく準備する私達を横目に、双子はのんびり優雅にご飯を食べていた。
途中レオンがシオンにひそひそ話をしていたけれど、どうせろくな内容じゃないだろうと思って、気にしないようにした。
ママはとても手先が器用なので、髪は直ぐに仕上がった。
緩く巻いた髪を何ヵ所かラフに編み込み、黒のドレスだと地味だからと言って、紫や赤や黄色のシンプルな花飾りを髪に飾り付けた。
それは昔見た映画の主人公の女の子みたいで、とても可愛い出来映えだった。
「アンナ?アクセサリーはつけるの?」
髪を仕上げたママにそう聞かれたので、私は今着けている鍵のネックレスをつけたままにしたいと言った。
高級品ではないけれど、アンティーク調のそのネックレスはドレスと合わせても違和感がない。
私の言葉にママは優しく微笑んだ。
「……とても素敵ね。」
ママは何かを察したのか、そう言って私のメイクを施し始めた。