叶う。 Chapter2




部屋に戻ると、待ち時間に確認するための楽譜なんかを鞄に詰め込んだ。

勿論、メイクなんかも直すのでわりと持っていく荷物が多い。

大体はレオンかママに預けっぱなしになるので、なるべく余計な物は入れないようにした。

それからベッドに座ると衣装が皺にならないようにきちんと伸ばしてから、私は携帯を手に取った。

時計を確認すると丁度7時前くらいだったので、会場入りが確か8時だから、多分そろそろ出掛けないといけない時間だ。

私はとりあえず、和也におはようの連絡だけをメールしておく事にした。


″おはよう、これから行って来ます。″


シンプルにそれだけを送信して、携帯をサイレントに設定した。

多分和也はまだ寝ているだろうから、会場に着いてからメールを確認すれば良い。


私は目を閉じて、自分の膝の上で指を動かして頭の中だけでメロディーを奏でた。

暫くイメージトレーニングをしていると、部屋の扉が開いた音がした気がした。

私はゆっくりと目を開けて部屋の扉に視線を映した。


その人は相変わらず何時もと変わらない表情で、扉の前に立ち塞がるように腕を組んで立ってた。


「何?」


私が冷めた口調でそう言うと、その人は口の端をゆっくりと上げて冷笑を浮かべた。








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