叶う。 Chapter2
「随分とご挨拶だな。」
シオンはそう言ってゆっくりと私に近付いて来た。
「だって、いつもあの子じゃないか確認しに来るじゃない。いい加減うんざりなの。」
私は冷たくそう言った。
特に今日は色々と気が立っているので、愛想を振り撒く気分にすらならない。
「別にお前でも構わない。」
シオンはそう言って私の手を取ると、私をベッドから立ち上がらせた。
「それならそっとしておいて。変に拘束されるのは嫌なの。」
私がそう言ってるにも関わらず、シオンは前屈みになって私の唇にキスをした。
触れるだけの優しいキスだったので、私は目を閉じるタイミングを完全に逃した。
「時間だ。」
シオンはそう言って私の手を引いて、私がまとめた荷物を手に取ると、そのまま玄関に向かった。
去年までは、シオンとレオンは制服で発表会に来ていたはずなのに、今年はなぜかスーツに身を包んでいた。
高い身長にスーツ姿のシオンは、なぜか私よりも目立つ気がして何だか少し腹立たしい。
玄関にはもう既に準備万端なママとレオンが待っていた。
こちらもシオンよりはカジュアルだけれど、やっぱりスーツ姿のレオンと、ママはワンピース風のきっちりとしたスーツに毛皮のコート姿だった。
「準備出来た?忘れ物ない?」
ママが私を見てそう言ったけれど、何故かシオンは私の手を引いたままだった。