叶う。 Chapter2
バスルームに向かった私は、さっさとシャワーを浴びる。
染めたばかりの髪が、何だか臭くて気に触る。
あの子が大好きだった柑橘系の香りは、何故か私も気に入ってる。
あの子はいつも自分で沢山泡立ててたけれど、私は面倒なので普通のボディソープで簡単に泡立てる。
見た目も中身も同じ人間なのに、なぜこうも違うのだろうか?
でも冷静に考えてみたら、シオンとレオンも外見は一緒だけれど、全てが違うのだから特におかしな事もないのかもしれない。
そんなことを思いながら、私は丁寧に泡に包まれた全身をシャワーで流した。
バスルームを上がると、全身から水分を綺麗に拭き取って、鏡を覗き込む。
腕の傷は1日でだいぶ綺麗になってきた。
この分なら、週末くらいには検査をしても問題ないだろう。
私は鏡を見ながら全身をくまなくチェックする。
ちょっと貧相だけれど、生まれつきの白い肌に幼さの残る身体、あの子は自分で気付いていなかったけれど、この身体とこの顔さえあれば、大抵の事は不自由しないはずだ。
折角だから有効活用するべきなのに、あの子はそれにすら気付かなかった。
いつも鈍くさくて、私をイライラさせる天才だったけれど、今となってはどうでも良い。