叶う。 Chapter2
ホールを出ると、私はママに連れられてトイレのパウダールームに向かった。
ママは少し崩れたメイクと衣装を完璧に直して、髪も綺麗に整えなおしてくれた。
「アンナ、大丈夫なの?」
ママは少し心配そうに私の顔にチークをはたきながらそう言った。
多分、ママが一緒に行かなくて良いのかという最終確認だと思った私はにっこり笑ってこう言った。
「大丈夫だよ、シオンがおまじないかけてくれるって。」
そう言って笑った私に、ママもつられて笑った。
「そうなの?じゃあ、シオンに任せて安心ね。」
多分、私が言った嘘はママには分かっていると思うけれど、ママは深くは追求しなかった。
身支度が済むと、私はママと一緒にパウダールームを出た。
シオンの姿を探すと、何故かシオンは喫煙スペースでタバコを吸っていた。
こちらに気がついているけれど、どうやらタバコを吸い終わるまではこっちに来る気がないようだった。
「ここに居なさい。」
ママはそう言って、シオンに向かって歩いていった。
一瞬怒りに行ったのかと思ったけれど、ママは何故かシオンからタバコを受け取って、二人で何やらひそひそ話をしながら一服している様子だった。
周りが騒がしいので何を話しているのかは不明だったけれど、私はそれを気にしないようにネックレスの鍵をぎゅっと握った。