叶う。 Chapter2




しばらく待つと、シオンとママは揃って私の元に戻って来た。


ママは私を優しく抱き締めると「頑張ってね。」と一言そう言って私の頭を名残惜しそうに撫でた。


「うん、ママ。頑張るから見ててね。」


私は精一杯の笑顔を作ってママに笑いかけた。

それでもやっぱり緊張はしていたので、引きつってしまっていただろうけれど、ママはいつもの様に優しい瞳で微笑むと、踵を返してホールに向かって歩いていった。


「・・・・大丈夫か?」


隣から聴こえる冷めたシオンの声に、私はゆっくり頷いた。


大丈夫。

もう震えたりしない。
私はあの頃の私じゃない。

シオンの言うとおり、私は狩る側の人間になるんだ。

私は鍵を握り締めながら、心にそう誓った。


私はゆっくりとシオンに向かって視線を合わせると、シオンがいつもする、あの綺麗で残酷な笑みを浮かべた。

シオンは私の瞳をしっかりと見つめて同じように笑う。

私の中の葛藤が消えたことが、これできっとシオンにも伝わったはずだ。


「・・・行こう。」


私は自分からシオンの手を引いて、控え室に向かって歩いていった。




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