叶う。 Chapter2
レストランでの食事はとても美味しかった。
私は前菜とメインディッシュとデザートまで綺麗に食べきった。
美味しそうに食べる私を、ママ達はとても嬉しそうに眺めていたけれど、何度かテーブルマナーを注意された。
あの子もそれが苦手だった事を思い出し、何だか癪に障ったけれど、私はきっちりテーブルマナーを頭に叩き込んだ。
この家にいる限り、私は世間一般から見たらお嬢様なのだ。
だから何処へ連れて行かれても、きちんと対処出来ないといけない。
だけれどママもシオンもレオンも、優しく私を諭すように気付いた時に注意してくれるので、嫌な気分になることはなかった。
怒鳴られたり、殴られたりする事がないだけで、こんなにも楽しくマナーを学んで食事が出来る環境なんて中々無いだろう。
私はそれだけでも充分過ぎるほど幸せなんだと、微かにそう思った。
食事を終えてレストランを出たのは、夜の9時少し前だった。
私は相変わらずママにくっついて歩いていたけれど、家に着く直前に突然レオンとシオンがこのまま出かけると言い出した。
「俺ら、ちょっと出掛けて来るよ。」
「あら、そう。」
ママにそう言って、レオンとシオンは裏通りの方へ向かって行こうとした。
ママは双子に興味が無いようで、そのままマンションに向かおうとした。
私はほんの少しだけ、シオンやレオンと出掛けたいような気分になった。