叶う。 Chapter2




「父親が、居るの?」


私の質問にシオンはもう何も答える気はない様子だった。


「お前が知りたい事は全部答えたはずだ。」


シオンは冷たくそう言って、目の前のシャンパングラスの中味を飲み干した。



刺青男の隣に居た女性がそれに気付いて、ボトルを手にしたけれどシオンはそれを制止した。


「もう帰るぞ。」


シオンがそう言うと、暫くしてこの前見た樹に少し似ているけれど、賢そうな男が書類のような物と台帳みたいな物をまとめて持ってやって来た。

シオンはそれを受け取ると、私の手を取り立ち上がった。


「シオン帰るの?じゃあ人選はこっちで決めちゃって良い?」


レオンの言葉にシオンは無言で頷いた。


「この前よりはまともな奴を選べ。」


シオンがそう言うと、レオン以外の全員が立ち上がりシオンに向かって頭を下げた。


「あーちゃん、おやすみー」


シオンに手を引かれる私に、レオンはご機嫌にそう言って手を振った。
私はその場に居た人達に軽く頭を下げて、シオンに引っ張られるようにして螺旋階段を降りた。

そして来た時と同じように裏口から出ると、シオンは夜の闇の中に身を潜めるように足早に私の手を引き歩いた。

暗闇の中で、シオンのシルバーブロンドの髪だけが風になびいてキラキラとして見えた。

シオンはまるで私が考え事をする隙を与えないかのように、何時もより急いで真っ直ぐに自宅に向かった。







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