叶う。 Chapter2
自宅に着くと、時刻は夜中の12時を少し過ぎていた。
シオンの歩くペースが速すぎて、ヒールを履いた足がすごく痛んだけれど、玄関に入った瞬間にその暖かい室内に何故かひどく安心した。
ヒールのパンプスを脱ぐと、途端に足に血液が流れ出した気がしてパンパンになった足が楽になった。
私は靴を揃えて玄関に上がると、後から入って来たシオンと目を合わせないように真っ直ぐにリビングへと向かった。
リビングの扉を開けると、もうそこにはママの姿はなかった。
きっと疲れていたから、先に休んでしまったんだと思った。
そう言えば、ふと和也に電話をするのを忘れていた事を思い出した。
まだ日付が変わったくらいだから、きっと起きて居るだろうと思って、私はそのまま部屋に向かおうとリビングを出ようと扉を開けた。
その瞬間、シオンが目の前に立っていた。
「……どいて。」
扉の前で仁王立ちしているシオンと視線を合わせないようにそう言った。
「……後で部屋に来い。」
「……嫌よ。疲れてるの。」
私は強引にシオンの横を通り抜けようとしてみたけれど、簡単にシオンの腕に捕まってしまった。
腕を捕まれたまま見上げると、綺麗な髪の隙間から見える蒼い瞳が、なぜだかいつもより更に冷たく私を見下ろしてる。
その瞳になぜかほんの少し怖くなった。
「……分かったから、離して。」
私がそう言って視線をそらすと、シオンはあっさりと腕を離した。