叶う。 Chapter2
毎朝私の顔色を伺うシオンに、憎しみすら感じて居たにも関わらず、今はそんなシオンに多少なりとも愛しささえ感じてしまう。
それは″北川叶″としての私を、シオンが全て知っているからだと思う。
相変わらず机に向かって、何やらやっているシオンの後ろ姿を観察しながら、私は今日聞いたシオンの秘密をひっそりと考え始めた。
シオンは私を引き取る為の条件として、やりたくない事をしていると言っていた。
あんな幼かったシオンが、何故そんな条件を請けたのか。
子供の頃から、シオンは″普通″の子供じゃなかったから、きちんとその条件が理解出来ていたのだろうか?
そもそも、双子の父親は一体どんな人なんだろう?
8年も一緒に暮らしているのに、その姿も見たことすらないし、存在があることすら、私は今日初めて知った。
だから、あくまで予想だけれどその人は日本には居ないんだろうと思う。
ママですら父親の話をする事がなかったし、おそらくこの家に来たことも無いのだろう。
だけれど何故、シオンは父親の指示を受けて今もそんな危ない事に首を突っ込んでいるんだろうか。
シオンは捕まらないと言っていたけれど、その根拠はどこからくるものなんだろう?
一つだけはっきり分かる事があるとすれば、双子の父親はきっと双子以上に怖い存在であると言う事だけだ。
じゃなきゃシオンは父親に言われるまま、如何わしい取り引きなんてしてないはずだからだ。