叶う。 Chapter2
例えシオンが戻ってきて、見てはいけない物だったとしても、見てしまえばシオンは私を責める事はしないだろう。
大事なあの子の身体を傷つけるような真似はしないだろうし、不機嫌になって少し乱暴に扱われるくらい、もう慣れっこだった。
私はそのメモをそっと取り出すと、丁寧に開いてそこに書かれている言葉を読んだ。
そこには名前が書かれていた。
人数にすると多分30人くらいだろうか。
英語で書かれている名前もあれば、日本語で書かれている名前もあった。
そこには女性の名前と男性の名前が両方あったけれど、それ以外は本当にただの名前しか書かれていなかった。
だけれど名前の横に、×がついているものとついていないものがある。
どちらかといえば×が付いている名前が多かったけれどその意味が分からなかったのであまり気にしなかった。
そのほとんどは私が聞いたこともない名前ばかりだったし、見なかったことにしようと紙を畳んだ瞬間、私の視線はある場所で止まった。
そこには私の知っている名前が書かれていたからだ。
“長谷川加奈”
それは確かあの子を虐めていた主犯の子の名前だった。
そしてその名前の横には×が付けられている。
一体この紙は何なんだろうと考えて居ると、部屋の扉が開く音が静かに聞こえてきた。
私は紙を持ったままゆっくりと振り返った。