叶う。 Chapter2




シオンは濡れた髪をタオルで拭きながら、そんな私を見て一瞬動きを止めた。

私は今更隠すのもおかしいので何事もなかったかのように、その紙を持ったままシオンを見つめた。


「・・・お前は本当に好奇心ばっかりだな。下手な詮索はいい加減止めたらどうだ?」


シオンは少し怒った口調でそう言った。


「これ・・・・なに?」


全く知らない名前だけなら、私も気にせず直ぐに片付けただろう。

だけれどそこには、知っている名前があった。
しかもそれは良い思い出とは決して言えない人物の名前だ。


「何だと思う?」


シオンはベッドにどさっと座ると、相変わらず髪を拭きながらめんどくさそうにそう言った。

服を着てない筋肉質な上半身に、ポタポタと水滴が落ちるのも気にせずに、シオンは冷たい蒼い瞳で私をじっと見つめる。

私には検討もつかなかったので、小さく肩を竦めて紙を元通りに戻そうとした瞬間、シオンは突然立ち上がり私の背後にやってきて両腕を回して私が閉じた紙をもう一度広げた。


「これが何か知りたいか?」


背後から抱き締められるように腕を回されているので、私は身動きが取れなかった。
頭の上から聞こえてくるシオンの冷たい声は、淡々としていて私は背筋が寒くなるのを感じた。


聞きたいようで、聞いてはいけないような、何故かそんな気分になった。

だけれど、シオンは当たり前のようにこう言った。





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