叶う。 Chapter2





「これは俺が殺した人間の名前だ。」


シオンは囁くように、私の耳元で小さくそう言った。

殺した?

私は何かの聞き間違えかと思って、シオンを振り返って視線を合わせたかった。

だけれどシオンはそうさせてくれる気はない様で、私を後ろからぎゅっと抱き締めたままだった。


人を殺してやりたいと思うことはいくらでもあるけれど、一体どういう思考回路をしていたら、それを実際に実行しようと思うのだろう。

それに人を殺すなんて、簡単に出来る事じゃない。

警察だってそんなに馬鹿じゃない。

実際にはたった一人殺しただけでも、簡単に犯人を捕まえるじゃないか。

言い知れぬ恐怖が身体中を駆け巡る。


「・・・正確には、処分が済んだ人間以外も書いてあるが。」


頭の上から聞こえてくる声が、何だか知らない人が喋っているんじゃないかってくらい私はその声音だけで全身が震えているのが自分でも分かった。


シオンはおかしい。

前からおかしいとは思っていたけれど、まさか人を殺すことをこんな風に普通に会話にすること自体おかしい。


「・・・ど、どうして?」


私は完全に怯えた声でそう聞いた。


「どうして?邪魔な人間を殺すのに理由がいるのか?お前だって要らない物が出来たら処分するだろう?」


「・・・・普通、は、そんなこと・・・しないよ。それに・・人は物じゃない・・・・」


「・・・・普通か。」


シオンはそう言うと、震える私の腕を掴み正面に立たせた。





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