叶う。 Chapter2
シオンは正面から私を見下ろす様に立ったまま、抑揚のない声でこう言った。
「お前にとっては普通じゃない事かもしれないが、じゃあ普通とは何だ?」
シオンはそう言って、私のウエストラインに沿って指を這わせた。
「ふ、普通は……人は殺さない。」
「じゃあ何故、殺人が起こる?毎日ニュースを見ていれば分かるだろ?人は人を殺す生き物なんだ。」
「…そ、それはそうかも…しれないけど。」
「人が人を殺すのは生き物として正しい選択だ。昔から人間は弱者を殺して富を得て生きてきた。」
「昔と、今は違う……今は人を殺すなんて、法律で禁止されてる。」
「法律で禁止されていようが、実際人間は毎日産まれて毎日死んでいく。死に方だって多種多様だ。必要のない人間が死んでも誰も気にしない。お前の母親のようにな。」
シオンはそう言って、私のパジャマの下から身体のラインに沿って指を這わせ続けた。
私はとてもじゃないけれど、そんな気分にならなかった。
だけれどシオンは尚も私に触れながら囁き続ける。
「……お前もこの家に居る気なら、こう言う事に慣れるべきだ。アンナと入れ替わる気がないなら尚更な。」
「……どういう意味?」
「お前はアイツとは違う。」
シオンはそう言って私の首筋に唇を這わせた。
「お前はアイツより、頭が働く分隠すのが面倒なんだよ。」
シオンは冷たくそう言って、私を近くのソファに押し倒した。
その仕草は乱暴で私は肩をぶつけたけれど、シオンはそんな事を気にかけてくれる気すらない様子だった。