叶う。 Chapter2
部屋に戻ると鏡台に向かい、いつもより念入りに肌のお手入れをした。
しっかりと、だけれど、派手にならない程度にメイクを施す。
昨日綺麗に染めた髪は、充分なほど派手に見えてしまうので、黒いレースで出来たシュシュで横結びにしておろした。
本当は派手にしていたいけれど、それだと男性に受けが悪い。
なるべく綺麗で清楚に見えるように。
その方が色々と都合が良い。
仕度が済むと、私は机を開けて通帳を取り出した。
あの子が貯めに貯め込んだお金は、余裕で七桁を超えていた。
これだけあれば、色々と調べるのに苦労しなくて済むだろう。
世の中、お金が全て。
お金さえあれば、多少の融通は利くものだし、後はそれなりの人脈さえ探し当てれば良い。
流石に大金を手に学校に行く勇気は持ち合わせていなかったので、私は元の場所に通帳を戻した。
机の引き出しを閉めたと同時に、部屋の扉が開いた。
私は一瞬驚いたけれど、振り返って見ると相変わらず無愛想な顔をしたシオンと目があった。
「……何?」
私がぶっきらぼうに聞こえるくらい面倒くさそうにそう言うと、ドアの前に腕を組んで立つシオンは眉一つ動かさずに、私をじっと見つめる。
どうせまた、私があの子に戻ったかどうかの確認に来たのだろうと思った。